白と黒の代用色が作りだすこなれ感

一番キメ感のあるファッションは白と黒だけで構成されたフォーマルスタイルであることに異論のある人はいないでしょう。

黒のスーツスタイルはもちろん、燕尾服やタキシード、全身真っ白の新郎服なんかもそうですね。

街着としては、これを着崩していくために、シャツをTシャツに変えたり、スラックスをデニムに変えたりして、適切なヌケ感（非フォーマル感）を図っていくわけです。

上の例では、アイテムのテイストを変えていくことで調整を図っていますが、同じことを色彩で行うことも可能です。

白黒が最もキメ感が出るのは、無彩色で最もコントラストがきつい暗色と明色の組み合わせが緊張感を生むからです。

このコントラストを緩めることが、ヌケ感やこなれ感に繋がっていきます。

具体的によく使われる代用色は、次のようなものです。

黒→ネイビーまたはチャコールグレー

白→ベージュまたはライトグレー

※いずれも無彩色のグレーを使用した方が白黒からのイメージの変化が少なく、緊張感が残る

このうち、メンズでは黒をネイビーで代用する着こなしが多用され、レディースでは白をベージュで代用する着こなしが多用されているように思います。

よくあるオールブルーのコーディネートは、実質的には「オールブラックの着こなし」の代用に過ぎず、それを着崩した亜流だと理解することができれば、多くのスタイルが白黒のどんなコーディネートを元としたものなのかを認識することができるでしょう（色の代用だけでなく、アイテムの代用もあります。より性格には全てのメンズスタイルは白黒スーツとその代用ですので別記事で再度取り上げます）。

代用色を使用する上でのポイントは、２つあります。

①代用色は良くも悪くもコーディネートが緩むこと

黒スキニーをインディゴスキニーに変えたとき、妙に垢抜けなくなるとがあるでしょう。

本来色であれば成立したはずの着こなしがダメになるのは、これが原因です。

ネイビーのスーツスタイルであればまだ十分なキメ感があるので意識されることが少ないと思いますが、例えばライダースジャケット+エンジニアブーツを黒ではなくネイビーにした場合はどうでしょう。

こなれ感と言えば聞こえはいいですが、代用色の採用とは即ち、緩み、緩和を行うことです。

例えばネイビーのライダースに白T、ネイビーのエンジニアブーツでは、子供っぽく、だらしなく、もっさりと垢抜けない着こなしとなるリスクを同時に孕んでいるのです。

この場合は、白Tをシャツといった緊張感のあるアイテムとする、あるいは本来色により近いグレーに変えるなどの解決策で、バランスを取る必要があります。

②代用色によって合う差し色が変わること

本来色である白黒であれば色彩がないため考えずに済んだのですが、代用色であるネイビーやベージュには色彩があるため、差し色との相性が発生してしまいます。

具体的に、黒をネイビーで代用した場合はロイヤルブルーなどの同じ寒色系の差し色が使いやすくなり、白をベージュで代用した場合は赤を代表とする同じ暖色系の差し色が使いやすくなります。

（もちろん寒色のネイビーコーデに暖色系である赤を差すことも可能ですが、暖色暖色でまとめた場合に比べよりハイコントラストになり強調されます。差し色=アイポイント、目立つ、わけですのでアイテムが浮いてしまうリスクは大ですが）

実際に、ネイビーを多用するメンズスタイルでは寒色系のクールなコーディネートが多く、ベージュを多用するレディーススタイルでは暖色系の温かみのあるコーディネートが多いのではないでしょうか。

なお、濃度彩度のバランスによってネイビーベージュグレーを代用色とすることが多いですが、必ずしもこれ以外の色が本来色（白黒）の代用とできないわけではありません。

例えば、暖色系差し色を使用したいが、白ではなく黒を代用したい場合を考えてみます。

黒の代用としてチャコールグレーでももちろんいいのですが、ベージュで白を代用したように、実はダークブラウンで黒を代用することができます。そして、同じ暖色系である赤などの差し色をより馴染ませることができるでしょう。

同じように寒色系白の代用としてサックスブルーを使用することもできますし、もっと言ってしまえば、黄色でも紫でも緑でも、色が薄ければ白の代用とすることができ、色が濃ければ黒の代用とすることが可能です。

ただし、本来色と色彩が離れれば離れるほど緩和が進んでしまうことを認識しておいてください。

上記を踏まえた上で、アイテムの選び方ですが、

テイスト自体に緩和感のあるアイテム（パーカーなど）=本来色

テイスト自体に緊張感のあるアイテム（テーラードジャケットなど）=代用色

というチョイスをおすすめします。